“世界を変える”試み – Worldchanging
このIDEA 2006で一番印象に残ったセッションは、最後を締めくくったこのブルース・スターリングの迫力満点の、野放図とも言える掟破りなスピーチでした。
今でもMP3ファイルで聴くことができますが、その場にいなかった方には最初のほう、何のことやらよく分からないと思います。実は最初の10分弱は、各セッションで他のスピーカーが話した内容から印象的なフレーズだけを引用して羅列しているだけ。言わば、このカンファレンスのコンテンツの「マッシュアップ」をその場でやってみせたというわけです。しかも、相当に皮肉たっぷりの口調で、ですw
これを聴いて、聴衆一同がかなり冷や汗状態に陥ったところで、彼はこう言いました。
Change it better, damn it!
Do a better damn job!
Change it faster!
要するに、Web2.0だのフォークソノミーだの情報アーキテクチャだの、何でもいいからさっさと世の中の役に立てなきゃイカンと。みんな自分の仕事を真面目にやれ!と。顔では笑ってましたが目は笑ってなかったかもしれませんw。
そしてさらに、「この本を絶対読め!俺の本よりこっちを読め!」と言いながら、彼は一冊の分厚い本を鞄から取り出して見せました。
それが、『Worldchanging: A User’s Guide for the 21st Century』という本でした。
その夜、ホテルに帰ってから早速その本について調べたところ、これはその名の通りの「Worldchanging」というウェブサイトを書籍化したものでした。以下はこの本の紹介ページの抄訳です。
『Worldchanging』は、この千年紀を生きるためのホール・アース・カタログ(Whole Earth Catalog)となるにふさわしい書籍です。
より良い未来を創り出す手段は身のまわりのいたるところに見つかるはずだと信じている、先進的かつ新鮮な思想家たちによって書き上げられた本であり、ここには読者のみなさんが新たな変化を生み出すために必要なツールを与えてくれる情報やリソース、レビュー、アイデアの数々が詰まっています。
というわけで、600ページ以上の大著で片手では持てないこの本をすかさず買うと共に、日本に帰ってから私はこのサイトのフィードを購読し始めました。
ブルースが手放しで絶賛したとは言え、これが実際どういうプロジェクトなのか、よくあるNPO系のサイトとどこが違うのか、ある程度の期間は自分でウォッチしてみないと理解できないだろうと思ったからです。
それから2ヶ月以上が経過したわけですが、あまりの更新頻度の高さに、フィードを読み切るのが大変で実は本のほうはまったく読めていません…(アル・ゴアが寄稿している序文すら読んでいない始末。情けない!)
が、サイトを見ていて以下のことは分かってきました。
このサイトは、小さなものから大きなものまで、世界を変える試みの数々を集めた「事例集」なのです。主義主張を語ったり、何らかの特定の運動をオーガナイズしたり、ということにはフォーカスしていません。
人類にとってどんな未来が理想的かというビジョンは、いまやほぼ選択の余地のないところへ落ち着きつつあります。極端な話、人類が滅亡してしまったら終わりなワケですから、とにかく「持続可能な社会」を作らねばならない、という点にはほぼ誰もが同意するでしょう。
というわけで、ひとまずビジョンは共有できました → じゃあ実際どうすればそのビジョンを実現できるの?というフェーズに来た時に、このような実践的なプロジェクトは非常に重要な意義を持つと思うのです。
また、このサイトに関して自分が特に魅力を感じるのは、テクノロジーや商業主義などを過度に否定することなく、うまく取り込んでいこうという柔軟なスタンスが見られることです。大企業だから、エスタブリッシュメントだからというだけで、逆差別的な扱いをすることはあまりありません。したがって、意外な企業が意外な努力をしているケースなどもあれこれ知ることができます。
たとえば、シティグループがインドで貧困層のユーザ向けに生体認証と音声入力を用いた特殊なATMの導入を計画している事例などは、非常に興味深く読みました。
日本からもこの「Worldchanging」の活動に何らかの形で貢献してみたい気がしますが、ボランティア記者になるだけの余力はないですし、とりあえずはROMに留まるしかなさそうなのが、残念なところです。
が、何はともあれ、この素晴らしいプロジェクトを教えてくれたブルースには、聴衆の一人として感謝。
さて足元に目を向けて、日本ではこの2007年、どんな一年になるのでしょうか?
さらに次のポストに続きます。