少し古い話題ではありますが、去る9月6日にShiv Singh(Avenue A | Razorfish)がBoxes and Arrowsに寄稿した記事、『Social Networks And Group Formation』がかなり面白かったので、アウトラインをメモしておきたいと思います(記事の正確な翻訳ではありませんので、ご了承のほどを)。
個人的に一番面白いと思ったのは、コミュニティの成長において「弱いつながり」というものが実は大きなポテンシャルを秘めているということ。
ここ数年のSNSの隆盛で、どちらかというと「強いつながり」が重視されがちな傾向を感じる今日この頃ですが、「強いつながり」はその集団を内輪の結束に向かわせる力が強く、柔軟性や拡張性に欠ける場合があり、意外と脆い面があるのではないでしょうか。
コミュニティ全体の弾力性(resilience)、ひいては持続可能性(sustainability)を高めるには、「弱いつながり」も大切にする仕組み作りが必要だと思うのです。
なお、この記事は3部構成になるそうで、パート2ではソーシャルネットワークにおける情報共有パターン、パート3では職場でのシナリオに基づくケーススタディを扱う予定、とありますが、まだこれらは公開されていません。(早く読みたいのに…w)
前置きが長くなりましたが、以下にメモを。
■イントロダクション
いまやご覧の通りの情報過多の世の中では、「What」「How」「Why」を知ることよりも、「Who」を知ることが肝要になっている。
つまり、効率的に情報の海を泳ぐには、“誰が何を知っているか”を知ることができ、その人物にコンタクトできる手段があればよい。
情報過多を生んでいる一因は他ならぬインターネットだが、それは社会ネットワークの効率的な管理に役立つツールにもなる。
この研究分野には、情報システム学者、社会学者、数学者などもかなりの関心を寄せている。
■弱いつながりが生み出す強さ (The Strength of Weak Ties)
社会ネットワークは、早くも1940年代後半から学術研究の対象となってきた。代表的な研究者として、Mark Granovetter、Linton C. Freemanらがいる。
Granovetterは、社会ネットワーク上では弱いつながりが強いつながりより力を発揮すると論じた。つながりが弱いほど、そこを流れる情報が“拡散される”傾向が強まるからだ。
強いつながりが内輪的な結束を育むのに対し、弱いつながりは、よく知らない者同士の交流を促したり、個人がコミュニティにとけ込むために欠かせないものとなる。
Granovetterの博士論文では、我々の多くが職を手にしているのは、強いつながりではなく弱いつながりのおかげであることが示された。元々よく知らなかったり、共通の歴史や面会経験もあまりなかった同僚が、仕事の上で実は一番助けになっていたのだ。強いつながりがある同僚だと、大抵は自分と同じ情報やリソースを共有しているので、お互いを補完しにくいというわけ。
彼はまた、無関心的つながり(absent ties)という概念も生み出した。これは、儀礼的つながり(nodding ties)とも呼ばれる。これは、弱いつながりとも呼べないくらい、思い入れや親密さや相互依存を欠いた希薄な関係を表す。
たとえば、同じ町内に住んでいて、日々すれ違う際にお辞儀をする程度の相手との関係。彼または彼女は、自分の生活の中に存在はしているが、まだ自分と何ら係わり合いがない。弱いつながりのように自分にとって役立ってはいない。
アプリケーション開発においては、その種類にもよるが、見知らぬユーザ同士が弱いつながりを形成しやすいような設計を行いたい場合があるだろう。彼らにとっては、強いつながりより弱いつながりを通じて得るもののほうが大きくなる見込みが高い。
ただし、開発者は弱いつながりと無関心的つながりの違いをわきまえていないといけない。
Granovetterの理論に従うなら、弱いつながりを視覚的に表現することに価値があるはずだ。しかしたとえばLinkedInでは、つながりの数がノードごとに表示されるが、それらが強いのか弱いのか、無関心的なのかという違いはわかりにくい。LinkedInの場合は、弱いつながりが作りにくいという別の問題もある。共通の知人を介して、つながりの登録を許可してもらわねばならないことが多いからだ。
■ネットワーク内での中央集権化 (Centralization in a Network)
社会ネットワークを理解するには、ネットワーク内部での求心性とノード間の関係を考慮することも必要。
Freemanはノードの求心性の違いに基づいてどのように“グラフの中央集権化”が生じるかを研究した。また、以下の3つの要因に基づく求心性の定義に関して、競合する3パターンの理論を示した。
- (1)連結性(Degree of Point)
- あるノード1個につながっているノードの多さ。連結性が高い=友達が多いほど重要人物。
- (2)支配性(Control)
- あるノードが他のノードと情報交換するために特定のノードを経由しなければならない度合い。数百名のユーザが、特定のユーザAを経由しないと互いにつながらない状態なら、そのユーザAの支配性は高い。ユーザAが、コミュニケーションの流れを支配するノードになっている。
- (3)独立性(Independence)
- あるノードが関連する全ノードと近接していて、特定のノード1個に依存したりそれに支配されたりしにくい度合い。独立性が高ければ、もっとも少ないリンク数でもっとも多くの人々とつながることになる。
ほとんどのSNSでは(1)に基づいてネットワークの成長を表現するが、(2)や(3)に基づくほうが有益な場合もある。たとえば情報の流れを支配するユーザAは、彼または彼女より友達の多いユーザBより重要である。また求心性は、どのメンバーが一番役に立っているか、あるいはよくつながっているか、結果的にもっともよい情報源になっているかを示す。
■FlickrとYahoo! 360に見る教訓 (Learning from Flickr & Yahoo)
2006年にYahoo!の研究員であるKumar、Novak、Tomkinsが、両サービスの比較研究を実施した。
これらのSNSは、初期の急激な成長の後に一定期間下り坂を経て、それから再びゆっくりと確実な上昇に向かうという基本パターンに従っていることが分かった。また彼らは、ネットワーク内のノードがその活動パターンによって以下の3種類に分類できることを見出した。
- (A)孤立型ノード(singleton)
- 他のノードとつながりを持たず、もっとも中心から遠い存在。
- (B)大群型ノード(giant component)
- 多数のノードが集まった最大級のグループ。各ノードと中心的ノードの間、また各ノード同士の間は密接につながっている。
- (C)中間型ノード(middle region)
- 独立的なグループで、そのグループ内でのやり取りはするが外部との交流はなく、グループ内に「スター」を作り出す。
ノード分析の結果、 全ノードの半分以上は(B)の外部にあることが分かった。また、(C)は一人の活発なメンバー(「スター」)が中心となり他のメンバーがそれを取り巻いている、ミニSNSとでも言うべきサブネットワークになっていることが多かった。
この研究結果では、(C)に属するユーザの割合は、Flickrでは全体の3分の1、Yahoo! 360では約10%となった。
また、もっとも成長が激しいのも(C)だが、それは活発なメンバーがネットワークを広げようとするためである。その結果、時間の経過につれて(C)は(B)に取り込まれていく。こうなると、その活発なメンバーの重要性は薄れていく。もし彼または彼女がそのSNSを退会しても、グループ内の他のメンバーは残る。
要するに教訓となるのは、SNS設計において、ネットワークの大部分が(B)に属していない点に注意すべきだということ。そもそも社会ネットワークとは、無数のサブネットワークの集合なのだ。だから、そのようなサブネットワークにおける利便性を高めるほど、ネットワーク全体の成長につながる。
それを実践しているMySpaceやFacebook、あるいは自分専用のSNSが作れるNingなどのサービスは、大きな成功をおさめている。
■LiveJournalおよびDBLPの事例と採用行動 (LiveJournal, DBLP & Adoption Behavior)
2006年に米国コーネル大学のBackstrom、Huttenlocher、Kleinbergが、大規模ソーシャルネットワークでのグループ形成についての研究を行った。LiveJournalとDBLPのデータを用いて、社会ネットワークを土台としたコミュニティの成長について分析している。
この論文では、もっとも成長が大きいのは(B)の大群型ノードに当たる部分だと結論付けている。ここで重要な問題提起。
あるノードが隣のノードの行動を意識するようになったら、どんな条件の下で、どんなネットワーク関係に基づいて、そのノード自身も同じ行動を取るようになるのか?
DBLPのデータベースは、イリノイ大学のCaiその他によっても研究の対象となった。
彼らの研究で分かったのは、各ノードが他にも複数のSNSに属しており、グループ形成のパターンや進化や情報共有において外部ネットワークからの影響が及んでいること。結果的に、個々のネットワークを単体で分析することはできず、外部ネットワークとのコンテクストに沿って研究する必要があることになる。
また外部ネットワークからの影響は、あるノードがネットワークから離脱するかどうかを決定する要因にもなり得る。
ここでまた重要な問題提起。
自分が属するソーシャルネットワーク上での行動が、どれくらい他のソーシャルネットワークの動向に影響されているかを知ることができるだろうか?
これらの問題について、Googleがスポンサーするカーネギーメロン大学の研究プロジェクト「Social Stream」を参考にしながら考えると非常に興味深い。これは、様々なネットワークをアグリゲートする“メタSNS”的なシステムである。(デモ動画)
こうして単一の統合インターフェースを通して別のネットワークでの活動が分かるようになると、 ネットワークに対するユーザの嗜好にどんな影響が出てくるだろうか?
オンラインの社会ネットワークが、外部からの影響と内部の活動の両方によって進化を続けるのは明らか。ピッツバーグ大学のButlerの論文では、ネットワークの規模が、参加メンバーが増えると離脱するメンバーも増えるといった、複雑な影響を及ぼす要因であることを示しながら、その事実を強調している。
ネットワークの規模やコミュニケーション活動の正負のバランスをとることが必要なのだ。
最後に提起すべき問題。
オンラインネットワークにおいてもっとも影響力を持っているのは、どんな種類のメンバー活動なのか、そしてネットワーク内の(A)から(C)のどの部分なのか?
■結論
SNSは人と人との仲介役を担う社会技術的システムであり、人間が独自の選択を行う能力がネットワークの進化に多大な影響を及ぼすことを意味する。
社会ネットワーク理論をウェブに応用することは可能だが、SNSも人間が構成要素となるシステムなのでその成否をきっちり予測することは難しい。