昨夜、Googleストリートビューをめぐる渡辺聡さん主催のディスカッションミーティングに参加させていただいた。
開催の経緯は渡辺さんのブログ記事に。
議論は予定の2時間を超え、残念ながら途中退席させていただくことになったが、今までモヤモヤしていたものが少し形になった気がするので、ここに雑感をメモしておきたい。
まずは、もうすっかり有名になったGoogleのミッションをあらためて確認しよう。
Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです。
かつてGoogleが、
まだオンライン情報の検索エンジンにすぎなかった時代には、このミッションは至極理に適っていた。オンラインに存在する公開情報はかならず誰かが管理・所有している情報であり、公開した以上はその情報に対するアクセシビリティが向上することが、情報の提供者にとっても利用者にとっても歓迎すべきことだっ
た。
ところが、みなさんご存知の通り、Googleが整理しアクセシブルにしようとする“情報”の範囲は、その後とめどもなく広がっていく。それが今や、オンライン情報にとどまらない現実世界の“生データ”にまで及んできたことで、このミッションの妥当性に疑念が生じているのではないだろうか。
Googleマップに航空写真が表示されるようになった時にも、有名人の自宅や、某国の秘密軍事基地が写っているなどといった騒ぎが少なからず起こったのは周知の事実だが、Google自身はそのような騒動を経て、自分たちのやりたいことにどの程度のリスクが伴うか現実的に計算しやすくなったのかもしれない。そう考えると、航空写真よりはるかに大きなリスクを伴うはずのストリートビューの公開に踏み切ったのも理解できる。
Googleは、まるで最高レベルの軍事トレーニングを積んだ兵士のように、変わることなきミッションを淡々とこなしているだけなのだ。
したがってストリートビューについても、
「そもそも誰も見もしない辺鄙な場所まで根こそぎ撮影しても意味ないんじゃね?」
という疑問はナンセンスとなる。
Googleにしてみれば、どのデータが利用されようとされまいと関係ない。
ひたすら“すべて”を集めることが、彼らの使命なのだから。
また、ストリートビューを「気持ち悪い」と感じる人は少なくないようだが、その気持ち悪さの源は、Googleのサービスというものが「目的を欠いたメソッドの提供」という性質を強く持っていることにありそうだ。
たとえばこのようなストリートビューの画像データは、そもそも“何のために”使うのか?
不動産物件の詳細を知ったり、待ち合わせスポットの様子を見たりという利用目的は容易に思いつくし、実際そのようなサービスを提供している事業者はすでに存在する。また、望ましくない事態ではあるが、犯罪行為を助長する目的で使われるということも考えられなくはない。いずれにせよ、物事を行う手段があれば、それには目的が伴うものだ。
しかしストリートビューの件に限らず、Google自身は常に、データの利用目的や用途については何のレコメンデーションもしない。APIを用意して、データを使いたければ使っ
てください、という姿勢を見せるだけである。
しかし、人間は物事に因果関係を見出せないと不安になる生き物だ。しかも、目的もなく手段だけがポンと目の前
に出された上、それが自分の権利を損なう恐れがあったり、容易に悪用されかねないものであれば、必要以上に不安や反発を感じるのも無理はないだろう。
そしてこのようなGoogle流の「あらゆる情報の一元化」と「APIによるアクセシビリティの提供」をセットにしたモデルも、元々のオンライン情報を対象とした検索サービスでは問題なかったはずが、ストリートビュー画像のような現実世界の“生データ”が対象となった時には手放しで受け入れがたい面が出てくる。
Googleは何の権利があって、誰の許可を得て、これらの —— 本来誰のものでもないはずの —— データを収集し保有しているのか? そう感じる人は少なくないだろう。(私の家は私のものだが、”私の家が写っている風景”は私のものではないのだ。)
昨夜のディスカッションでも、いくつか関連する意見があがった。いずれも今後さらに考えるべき論点かと思う。
- 公共性が伴うデータなので、行政が関与して管理/提供すべきでは?
- Googleに哲学はありやなしや。一種のノーブレス・オブリージェを自認させるべきか。
- ストリートビューの登場で、自己情報管理権が損なわれる危険があるのでは?
というわけでこのディスカッションでは、中心となった法的な課題の数々に加え、概念的/倫理的な方面でもまだまだ議論してみたいトピックがあることに気づいたという収穫があった。
主催者の渡辺さん始め参加者のみなさんには、貴重な議論の場に加えていただいたことに感謝申し上げたい。
最後にちょっと余談だが、GoogleマップやGmailがいまだに「ベータ版」であることにも、ちょっと気をつけておいた方が良いかもしれない。私自身、これらのサービスに限りなく依存してしまっているが、われわれユーザーはいまだ「ベータテスター」でもあるのだ。すなわち、そのリスクを承知の上で利用しているという自覚を持たねばならないということである。
Gmailのヘルプには、「Gmailがベータ版から正式版になったらどうなりますか?」という質問があるが、その答えはきわめて能天気なものだ。マイクロソフトがこんな回答をしたら許されないかもしれない。そして、Googleがマイクロソフトと決定的に違う点もまさにここに見て取れる。マイクロソフトの製品やサービスの利用者は「カスタマー」として待遇されるが、Googleにとってのカスタマーとは、広告主と、アプライアンスのような有償プロダクトの利用者だけなのではないだろうか? 無料サービスの利用者は、永遠のベータ版の利用を受け入れ、先ほどのある意味ふざけたFAQさえ大目に見なければいけないとすれば、カスタマーより格下の「ユーザー」にすぎないのかもしれない。
そして、プロダクトとセットでユーザーにライフスタイルまでも提案するソニーやアップルのように、サービスの望ましい使い方やモデルを提示することなど、Googleは微塵も考えない。
Googleのサービスはすべて顔のない“のっぺらぼう”のようなものだ。
彼らが提供するサービスやデータを使って何をするのか、どんな目的を達成するのか、自分の生活にどう活かすのか、それを考えるのはユーザーである私たちの自己責任なのである。
良い悪いの問題ではなく、それが「目的を欠いたメソッドの提供」を旨とするGoogleという特異な企業についての事実ではないだろうか。

茨木市議会で取り上げられましたね
Googleストリートビュー
http://www.journalist-net.com/
http://jnetmore.blog50.fc2.com/blog-entry-132.html
投稿情報: ねこ | 2008-09-13 18:51
有益な情報ありがとうございます。このように公共の場でもこの話題がどんどん俎上に上がっていくとよいですね。
実は、この記事をポストした後で自分の妹から、
「お姉ちゃん大変!ストリートビューにお父さんが写ってる!」
という連絡があり、すぐ実家の辺りをチェックしてみたところ、確かに実の父親が車で出かけるところが激写されていました。
他人事ではなかったようですw
それはそうと、リンク先の記事に、
「正確な議事録は茨木市のホームページに3ケ月ほどでアップロードされるようです」
とありますが、本当だとしたら信じられない遅さですね…
お役所というのは、やはり別次元の世界なのかと。
投稿情報: noriyo | 2008-09-14 08:33
宇都宮市議会 ストリートビュー規制の
陳情第18号「犯罪防止等を目的とした個人住宅等の撮影制限規制条例等制定に係
る陳情」
(8月27日上程)
要旨
本年8月よりグーグル株式会社による「グーグルマップ ストリートビュー」が
開始されたが、 このサービスは任意の道路からの風景を閲覧できるものであり、
その撮影対象は生活道路までを含んでいることから、個人住宅の写真も表示され
ている。このため、プライバシーの侵害に当たる等の問題点が指摘されている。
犯罪防止、プライバシー保護等の観点から、網羅的に個人住宅等を撮影し、公
衆へ提供する行為を一定要件下で制限する条例または規則の制定、もしくはこれ
に準ずる施策の検討を求める。
審査結果⇒審議中
お問い合わせ
議会事務局 議事課
電話番号:028-632-2608 ファクス:028-632-2613
http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/gikai/kaigi_kekka/10153/010154.html
不適切な画像と削除依頼をGoogleにしても、数日で画像が元に戻っているケー
ス 続発で、また、最新の画像に撮影し直した画像がアップデートされたおりま
た 削除依頼した家屋画像が復活するのではないかという懸念も大きく、東京都
庁では都民からの通報も多く情報収集を進めているようです。
投稿情報: ねこ | 2008-09-18 00:27