David Eaglemanが語る、文明の崩壊をやりすごす6つの手軽なステップ

前々回のポスト「翻訳記事『記憶の喪失』」で紹介した Long Now Foundation のセミナーで、科学者でありSF作家でもある David Eagleman が、“Six Easy Steps to Avert the Collapse of Civilization”について語ったとのこと。なかなか興味深い内容なので、Stewart Brand によるサマリーを基に、1ステップずつ簡単に覚え書きしておきたいと思います。

ちなみに、死後の世界をテーマにした彼の短編小説集『Sum: Forty Tales from the Afterlives』も、Amazon USのカスタマーレビューでかなりのハイスコアを記録しており、非常に面白そう。これはぜひ翻訳が出ることを期待したいです。


さて、Davidいわく、とかく不滅だと考えがちな文明というものも、大抵はいずれ滅び去る運命にある。文明が存続するには運も必要だし、新たなテクノロジーの助けも要るけれど、ありがたいことに現在ではインターネット技術のおかげもあって、文明の耐久力アップに必要な6つのポイントを実践しやすくなるだろう、とのことです。

ステップ1: 他人に向かって咳をしないようにすること。
(Try not to cough on one another.)

これまでに飢饉や戦争で死んだ人間の数より、伝染病による死者の数の方が多い。伝染病はギリシャやローマの没落の一因でもある。今ではネットを利用した在宅業務や遠隔治療などが可能になりつつあるので、昔とは違い、感染者に接触する機会をずっと減らすことができる。

確かに、SAASや新型インフルエンザの流行による社会的な影響の大きさを見れば、これが地味ながら非常に重要なポイントだというのはうなずけます。

ステップ2: モノをなくさないこと。
(Don’t lose things.)

アレクサンドリア図書館や、マヤ文明、クレタ島のミノア文明などの事例でわかるように、知識とは獲得しがたく喪失しやすいもの。ローマの水道設備は帝国の没落とともに千年もの間失われてしまった。予防接種の技術は、ヨーロッパで再発見される700年前に中国とインドで発明されていた。ミケランジェロのダビデ像は、現在では細部までデジタル化されたデータとして安全に保存されている。

Davidは、PubMedJSTORGoogle Books などを利用して必要な文献にアクセスしているとのこと。情報は広めることが大事、再発明は避けるべし。
アトムのビット化と、メタデータの進化と増大などによって、 私たちが自分の持つモノや情報をどのように管理するのかは確実に変わりつつあると思います。これはちょっと Bruce Sterling の「SPIME」の概念とも関係があるところ。

ステップ3: コミュニケーションの速度を上げること。
(Tell each other faster.)

古代クレタ人は、現在のような津波警報システムがなかったために滅んでしまった。先日のハイチ地震では、クラウドソーシングによって災害情報を配信する Ushahidi.com によって多数の人々が救われた。

このような即時性の高いコミュニケーションがもたらす多大なメリットは、今ではよく知られるところとなりましたが、まだそのようなオンライン版の社会ネットワークにコミットしていない人々も多数存在しているのが現状です。そこから各種の情報格差が生じている面もあるので、今はまだまだ過渡期といえるでしょう。

ステップ4: 専制を弱めること。
(Mitigate tyranny.)

ロシア連邦の崩壊を招いたのは、ルイセンコ論争に代表されるようなトップダウン式の過ちであった。今では選挙の不正を携帯電話ユーザーによるクラウドソーシングで暴ける世の中だ。

ここでDavidは、中国の検閲に反旗を翻したGoogleのような企業は褒めてつかわす・・・と述べたそうなのですが、個人的にはこの件は必ずしもGoogleが正義とは言い切れないと考えています(詳しくはまた別の機会に)。

ステップ5: より多くの人々を巻き込んで問題を解決すること。
(Get more brains involved in solving problems.)

人的資本を大切に。大学の講義録がオープン化されることで、より多くの人々が高等教育に触れられるようになった。クラウドソーシングによる問題解決は、PatientsLikeMeFolditCstart などのサイトで一段と進化しつつある。次なるステップは、“ソサエティソーシング”になりそうだ。

ここでDavidのいうソサエティソーシングとは、クラウドソーシングとどう違うのか? そこがサマリーだけではわからなかったので、追って深堀りしたいところ。

ステップ6: エネルギーを枯渇させないようにすること。
(Try not to run out of energy.)

エネルギーの消費がリターンを上回れば、文明の崩壊は免れない。電子メールを使えば、森林伐採や輸送のコストを減らせる。オンラインショッピングも、配送業者がルートを最適化してくれればエネルギー効率が上がる。ミーティングやカンファレンスも、オンラインで実施できるように工夫していく必要がある。

まあオンラインショッピングに関しては、輸送コストも気になりますが、Amazonを始めとしてどこも過剰包装気味なのが昔からとても気になっています。必要以上に大きな段ボール箱が届いて、「これなら本屋さんで、袋もカバーもいりません、と言って買ってくる方がマシだなあ」と残念に思うことが多いので、今後さらに改善してほしいポイントです。

ところで、以上の6つのステップを紹介した後に、

「しかしこんなにネットの存在ありきになってしまったら、もしネットが落ちた時どうなる?
実際に何度か落ちてみないと、どうすりゃいいのか分からなさそうだね」

といったコメントが・・・w
これはDavidの見解なのか、サマリー担当のStewartの意見なのか。

確かに、ネットが落ちたら終わりという世の中になっては元も子もないので、やはりネットはあくまでも手段であって目的ではないこと、それによって私たち人間本来の「自活力」を鍛えるのが大事だということを、改めて考えさせられるのでした。

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