小学生の時、私は自分で考えついた、ある一人遊びをよくやっていた。
他愛もない一種のだまし絵ごっこのようなものだ。
その遊びができるのは、塾帰りの夜道を一人で歩いている時。
空には雲がまだらに浮かんでいて、月は見えない夜でなければならない。空全体のうち、雲の占める部分の合計がちょうど半分くらいなら理想的だ。
その夜空をじっと見つめて、頭の中で「図」と「地」を反転させる。
つまり、雲の部分が空で、その間に見える空が雲だ、と自分の眼と脳に思い込ませる。
これがうまく行くと、夜なのに不思議な仄白さで光る「空」に、吸い込まれそうな薄暗さを湛える「雲」が浮かぶのが見えるという、まるで異次元の世界に迷い込んだような体験ができるのだ。
子どもだった自分は、この幻想的な遊びに夢中になった。
