それは、昨年の暮れに、ある出版社に送った一通のメールから始まった。
19 December 2010 23:15
1991年発売の
「バロック 変態教祖株式会社/虚無への供物」
の在庫はありますでしょうか?
20 December 2010 10:41
浅野紀予様
お問い合わせありがとうございます。
「バロック」は現在2冊しかございません。
ただし、箱の新しいのがありませんのでカヴァーだけ替えるようになります。
もちろん中味は全然傷んではおりません。
書店さんからご注文の場合はお名前を必ずお伝え願います。
注文で出荷しても返品される場合がございまして、ますます書籍が汚損されてしまうのです。
書籍の定価(税込み)は¥2,243でございます。
どうぞよろしくお願いします。
20 December 2010 13:21
早速のご連絡ありがとうございました。
先ほど、○○書店のオンラインストアで注文をしました。
○○書店に在庫があればそれが郵送されてくるのですが、在庫切れの場合は版元注文をかけていただくように依頼しましたので、その場合は○○書店 ××支店から注文があるかと思います。
取り急ぎ、ご連絡申し上げます。
20 December 2010 16:48
浅野紀予様
ご注文ありがとうございます。
多分○○書店さんには在庫はないと思われます。
はっきり××支店からのご注文で、注文主のお名前が分かっていれば、すぐに出荷致します。
24 December 2010 13:19
浅野様
本日、○○書店さんから浅野様のご注文がありました。
出荷が済んでしまった後でしたので、月曜日にお出しします。
今年中にお手許にお届け出来るかちょっと分りませんが、どうぞよろしくお願いします。
こうして、私の手元に、大昔に書店の片隅で出会ったまま、いわば生き別れになっていた懐かしい本がやって来た。
版元である刀水書房の担当者の方が、このように親切な対応をして下さったのも、 とてもありがたいことだった。受け取ったメールのそこかしこに、担当者の方の本に対する心づかいが感じられ、本当に嬉しかった。この場を借りて、御礼申し上げます。
(メールの内容をブログに掲載する許可をいただいたことにも感謝です。)
ところで、1991年といえば、今からもう20年も前のこと。
この本を見かけたのは、たぶん池袋リブロの前身である西武ブックセンターだったような気がする。当時そこは、ポストモダンやらサブカルをめぐる情報が詰め込まれた宝箱のような場所だった。まだ大学生だった自分も足繁く通っていたのだが、ある日、書棚の中で妙に目にとまったのがこの本だった。
背表紙に『虚無への供物』とある。
日本探偵小説史上の奇書のひとつと称される、中井英夫の代表作のタイトルと同じだ。それは自分も夢中で読みふけった大好きな作品なのだが、この本はその小説と関係があるのだろうか?
そう思って棚から抜いて表紙を見ると、なぜかそこには『VELVET UNDERGROUND』の文字が。
こっちが書名なのだろうか?
よくわからないが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドもこれまた自分が死ぬほど好きなバンドの名前だ。
ひょっとしてこの本と私は、赤い糸で結ばれているのではないだろうか?w
しかし、中身をパラっとのぞいてみて、私は茫然とした。
その本は、自分がそれまで読んできた本とはあまりにかけ離れすぎていた。小説でも詩でもない、なにかまったく未知の芸術作品とでも思えばいいのか?正直に言うと、そこに書かれていることは、まるで正気の沙汰とは思えなかったのだ。
もちろん、芸術とは時に狂気をはらむものだが、この本は当時の自分にはまるで手のつけようもないものに見えた。
そこで私はこう思ったのである。
「いつか、こういう本が楽しめるような自分になったら、
この本を買うことにしよう」
こうして、その後も私は西部ブックセンターへ行くたびに、未練がましくこの本が棚にあることを確認していたのだが、徐々に池袋へ行くこともなくなり、この本のことも記憶の奥へしまいこまれてしまった。
そしていつのまにか十数年の月日が経った昨年、ある雑誌でこの本が紹介されているのを目にしたのだ。
後編へ続く »