写真と記憶をめぐって

ここ数年ほど、自分のものの見方を大きく変えるような経験を通じて、わたしは写真について考えることが多くなりました。写真とは、ある対象をイメージとして「記録」するだけではなく、それが存在した時間を「記憶」するものでもある。そう気づいたとき、以前から折に触れて考えてきた「記憶」というテーマと「写真」が結びついて、このエクリの記事へとつながっていきました。 続きを読む

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詩と経験とコミュニケーション

詩とは何か、経験とは何か。ふと思えば、その二つを自分に問いかけるようになったのは、多感な十代の頃でした。当時のわたしが詩を好きになったきっかけは、室生犀星や萩原朔太郎といった明治生まれの詩人たちの美しい作品でした。そして、経験をめぐる森有正の思想に触れたことで、わたしは拙いながらも、自分なりに経験というものを考えるようになったのです。

時は流れ、数年前に読んだヴァルター・ベンヤミンの『経験と貧困』がきっかけとなって、詩と経験とが自分の中で結びついていくことになりました。 続きを読む

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ふたたび考える、生物としての人間と情報探索

今年の8月に私が「ÉKRITS / エクリ」に書いた記事「ベリーピッキングモデルで考える探索と検索」では、Web誕生以前に情報検索の未来を探っていた図書館情報学者、マーシャ・ベイツのベリーピッキングモデルについて調べながら、わたしたち人間がなぜ、どのようにして情報を探すのかを考えてみました。

その記事の最後でお伝えしていたように、もう一度ベイツの思考をたどりながら書いた、新たな記事を公開しました。 続きを読む

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探すことと見つけること ― ベリーピッキングモデルをめぐる考察

もう10年近く前のことです。インターネットが日々の生活に浸透してきた当時の情報体験をテーマとした、『アンビエント・ファインダビリティ』という本を翻訳した私は、その出版記念イベントで、こんな質問を受けました。

"findability" は、"searchability" と同じものですか?

その場で自分がどう説明したか、正確には記憶していませんが、それらが同じものではない、と答えたことは覚えています。その違いを、いま改めて言葉にするとしたら、こんな答えになりそうです。 続きを読む

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「デザイン・フィクションとデッドメディア」について

このブログでは時折、SF作家ブルース・スターリングについて触れてきました。私が情報アーキテクチャ(IA)とスターリングの関わりを意識するようになったのは、2006年のことです。その年、米国シアトルに赴いて参加した「IDEA 2006」というカンファレンスで、情報アーキテクチャについての刺激的なスピーチをする彼を目にしたのがきっかけでした。デザイナーでもインフォメーションアーキテクトでもない彼が情報アーキテクチャについて生き生きと語り、その行方を探っていることを、とても嬉しく感じたのです。 続きを読む

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記事「思想としてのペースレイヤリング」を公開しました

スチュアート・ブランドの1994年の著書『How Buildings Learn』は、建築の専門書でありながら、情報アーキテクチャの分野でも多くの人びとに影響を与えてきた本です。その中心となっていたのが、建物における「ペースレイヤリング(Pace Layering)」の概念です。

2006年の春にこの本と出会った自分が、折に触れて探ってきた「ペースレイヤリング」の歴史と現在について、以下の記事を書きました。 続きを読む

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『Intertwingled』著者ピーター・モービルから、日本のみなさんへのメッセージ

私が翻訳をつとめた書籍『Intertwingled —錯綜する世界/情報がすべてを変える』は、本日発売となります。これを記念して、著者のピーター・モービルから、日本のみなさんへのメッセージが届きましたので、翻訳してご紹介します。

時代や場所を越えて、さまざまな文化を探りながら、その多様性の大切さを学んできたピーターならではの、日本への理解と親しみを伝えてくれるメッセージです。 続きを読む

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『メディア論』からの引用を翻訳して、思ったこと

前回のポストで紹介した、『Intertwingled』の訳者まえがきの記事(記事提供: ÉKRITS / エクリ)で、ピーター・モービルが昨年の IA Summit で行なったスピーチの冒頭に、マーシャル・マクルーハンの『Understanding Media: the Extensions of Man』からの引用があったことに触れました。

1987年に、みすず書房から出版された訳書『メディア論―人間の拡張の諸相』では、その一節がこのように翻訳されています。 続きを読む

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ピーター・モービル『Intertwingled』日本語版についてのお知らせ

『アンビエント・ファインダビリティ』『検索と発見のためのデザイン』に続き、昨年8月に発売されたピーター・モービルの最新著書、『Intertwingled』の翻訳を行ないました。ピーターが初めてのセルフパブリッシング形式で出版したこの本の日本語版を、『Intertwingled – 錯綜する世界/情報がすべてを変える』というタイトルで、まもなく発売します。

Intertwingled - 錯綜する世界/情報がすべてを変える

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写真と記憶

1949年生まれの写真家、谷口 雅氏のテキストを引用しながら、「写真と記憶」の関係について思ったことをメモしておきたい。

写真は機材の変革によって、幾度かの脱皮を経験し、時代に即した価値観を人々の記憶に関わる欲望のなかに見出してきた。それはけっして新しい発見ではなく、幾度も時計の針を後戻りさせ、距離を飛び越えていくという写真の原点へと後戻りし、生き延びてきたしたたかなメディアであるとも思っている。

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