クロスチャネル、クロスメディア、マルチチャネル: どこが違う?

この記事は、Andrea ResminiとLuca Rosatiによる「Pervasive Information Architecture Blog」へのポストを、Andreaの許可を得て翻訳したものです。
オリジナルポスト: Cross-channel, Cross-media, Multi-channel: Where’s the Difference (August 22, 2011)

これらのコンセプトをめぐっては、どうも混乱が見られる。3つとも同義語のように扱われることが少なくないが、ちゃんと違いはあるのだ。それに、クロスチャネル型のユーザエクスペリエンス(UX)デザインや、浸透型情報アーキテクチャ(pervasive information architecture)を実践するには、これらを理解しておくことが欠かせない。というわけで、いったん定義しておこう。

マルチチャネル

マルチチャネルとは、さまざまな多数のチャネルを経由してシステムとやり取りできるようなサービスを、ユーザや顧客の元へ届ける方式である。マルチチャネルの特性は、その内のどのチャネルにおいても、数が一定ではない各種のタスクを始めから終わりまで別のチャネルに頼ることなく実行できるという点だ。

つまり、銀行での送金を例にするなら、自宅のPCでオンライン取引をしてもいいし、電話によるテレフォンバンキングやモバイルアプリを利用してもいいし、最寄りの支店に出かけてもいい。どの場合でも、そこで選んだ一つのチャネルの内部ですべての取引を完結させることができ、別のチャネルに移動する必要はないということだ。

クロスメディア(またはトランスメディア)

クロスメディアについての僕らの議論は、Henry Jenkinsの洞察によるところがかなり大きい。クロスメディア型の製品を(あわよくば)丸ごと体験するには、多数の環境やメディア、チャネルを股にかける以外にないというのが、彼の基本スタンスである。マルチチャネル戦略とは対照的に、クロスメディアは一つのチャネルから別のチャネルへの移行を奨励もしくは強制する — これこそが、タスクを完了したり製品を体験するために必要となるのだ。

「マトリックス」や「LOST」などをめぐる現象は、この戦略の優れた事例となっている。それらは、テレビ版や映画版の作品、ゲーム、ウェブサイト、番外編などがすべて集まって成立するシステムであり、各パートやチャネルは、全体から見ればその一部しか体験できないように念入りにデザインされている。 他のチャネルとの関わりを、多少なりともあからさまな形で常に見せながら、相互にリンクしているのだ。つまり、クロスメディアは明らかに、断片的な体験をもたらすようにデザインされていると言い換えてもいい。どのメディアも、単独ではその完全なパッケージを提供しないのである。さらに言うと、メディア関連の体験と消費(映画、音楽、テレビ)に重点が置かれる。

クロスチャネル

クロスチャネルは、マルチチャネルともクロスメディアとも違うスタンスを提供する。どれか一つのチャネルが、エコシステムへの完全な入り口を単独で用意している場合もあればそうでない場合もあるのだが、ユーザや顧客のほとんどはそのチャネルにA地点からZ地点まで留まってはいないのが実状だ。別の言い方をすれば、そのユビキタスな生態系の中には、クロスメディアとは対照的にユーザが別のチャネルに頼ることなく体験の旅を完遂できるチャネルもあるのだが、実際にそうなるケースはあまり多くないということになる(マルチチャネルと比べれば皆無に近い)。ここがまさにクロスチャネルならではの特徴であり、デザイン上の課題が待ち構えているところなのである。

もっと詳しく知りたい方は、Andreaのブログ記事をご参考に。

参考資料

  1. Drew Davidson et al. 2010. Cross-Media Communications: An Introduction to the Art of Creating Integrated Media Experiences. ETC Press.
  2. Jenkins, H. 2009. The Revenge of the Origami Unicorn: Seven Principles of Transmedia StorytellingConfessions of an Aka-Fan, December, 12.
  3. Resmini, A. and Rosati, L. 2009. Information Architecture for Ubiquitous Ecologies. doi>10.1145/1643823.1643859. (http://andrearesmini.com/blog/ia-for-ubiquitous-ecologies にも転載)
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